血圧値 125/85/70 酸素飽和度 98% 体温 36.4℃ 体重 67.1キロ
そういえば6月の第3日曜日は、「父の日」ですね。
僕にはもう父はいないし、自分が父でもないけど。
☆
ここに1本の釣竿があります。
竹でできています。
現代の釣竿はカーボングラファイト製が主流ですが、それ以前は、殆どのロッドが、竹素材で出来ていました。
日本の釣り竿は和竿と言って切ってきた丸竹をそのまま使うのですが、ヨーロッパでは六角竿といって、三角形に削った竹材を6つ貼り合わせて使います。
大英帝国が、七つの海を探し回り発見したトンキンバンブー(もとはトンキン湾周辺の中国広東省の綏江流域だけに自生していたもの)が最良の材質と言われ現在も多く使われることになりました。
バンブー・フライロッドの生産、普及の最盛期は1870年から、1950年代にファイバーグラスが全盛となるまでのおよそ75年ほどです。
しかしながら、熟練の職人によって作られたバンブー・フライロッドはその実用においても最高峰であり続け、所有者たちに評価されているのです。
僕も何本か持ってますが、この竿はとくに愛着があるものです。
トップとバットのリングにはシルクライン使用を前提に瑪瑙が填められております。
アーネスト・ヘミングウェイが愛用していた、イギリスのハーディー社のバンブーロッドで、「フェアリー」(Fairy)というモデルです。
「妖精(フェアリー)」と銘が付けられたこのロッドは、数あるハーデイ・バンブー・ロッド・シリーズの中で最も柔らかいベーリー・ライト・ロッドと言われるカテゴリーに入ります。
その中でも特に、デリケートで軽いフェアリー・シリーズは、後年のモダン・バンブー・ロッドに近いアクションです。
ドライ&ウエット用ロッドで、キャストするとバットから曲がります。
ハーディーは、伝統的なバンブーロッドの製造で知られており、その高品質と工芸技術で多くの釣り愛好者に愛されています。ヘミングウェイもその一人で、「The Fairy」は彼のお気に入りの釣竿の一つでした。
その軽量で繊細なデザインと優れたキャスティング性能で知られており、フライフィッシングを愛するヘミングウェイにとって最適な選択でした。
HARDY Alnwick England
英国王室ご用達、創業1872年。フライフィッシングの歴史と共にある伝統ブランド。
創業者ウィリアム・ハーディーは、生まれ故郷である英国ノーサンバーランドのアニックの土地で鉄砲工として店を構え、その後、彼の兄弟ジョン・ジェームズが加わり、The Hardy brothers社となった。
ハーディー兄弟の釣りへの情熱は深く、次第に釣り具の制作を事業のメインにし、その卓越した性能とエレガントさで多くの顧客の支持を得、やがてハーディーのロッドとリールは確固たる名声を得るまでになった。
ハーディーの愛用者には、国王ジョージ5世や数代に渡るプリンスオブウェールズが名を連ね、全盛期には各国10以上の王室御用達がハーディーに与えられていた。
ロンドンに立ち寄ったヘミングウェイは、ハーディーでFairyを買い求め、それでアメリカを釣り歩いたのですが、愛竿一式を列車で送ったところ紛失してしまい、それでフライフィッシングを一切止めてしまった、というエピソードがあります。
ところが、フライフィッシングを止めてしまった後、息子とアイダホで一回フライフィッシングをしたそうで、その際にFairyとJ.J.Hardyを使ったと息子が言っているとも言われます。
ヘミングウェイはFairyにウェットフライを三本付けた仕掛けて釣りを楽しんだそうです。
「フライフィッシング博物館」というところに、このフェアリーが展示されているそうですが、どういう事情なのかな。
American Museum Of Fly Fishing - The Home Of Fly Fishing History
The American Museum Of Fly Fishing
4070 Main Street,
Manchester, VT 05254
Tel: 802-362-3300
ERNEST HEMINGWAY'S HARDY FAIRY
HPを見ると、こんな記事が書いてあるのですが。
当館のリー H. パーキンス ギャラリーには、アーネスト・ミラー・ヘミングウェイがかつて所有していた、コルクがまだ完璧な状態である、使用頻度の低いハーディ・フェアリー・フライ ロッドが展示されています。
このロッドに添えられた手紙は、おそらく、当代最高の作家の 1 人であるヘミングウェイの姿を完璧に描き出しているのでしょう。
ヘミングウェイが熱心なアウトドア派だったことは周知の事実だが、文豪の男は結局、マスを狙うフライフィッシングを断念した。これは、彼が『老人と海』で雄弁に描いた巨大なカジキのような、より大きな獲物を追い求めていたからではない。また、彼が子供の頃のフライフィッシングへの情熱を完全に放棄したわけでもない。彼は主に海水でフライフィッシングで他の魚を釣っていた。
むしろ、彼がマスを狙うフライフィッシングをあきらめたのは、よくある失敗のせいで、1972年9月のフィールド&ストリーム誌への手紙で彼の息子が語っている。
その手紙にはこう書かれている。
ご担当者様:
このハーディ・フェアリーの竿は、私の父、故アーネスト・ヘミングウェイが所有していた、現存する2つのマス釣り用具のうちの1つで、彼がここアイダホでマス釣りをした際にビッグウッド川の下流コットンウッドセクションで使用した竿です。
この竿と、ジョン・ジェームズ・ハーディのもう1本の竿は、修理状態の悪いものでしたが、彼が1940年の秋に初めてサンバレーに来た際に持っていた唯一のマス釣り用具で、リール、釣り糸、数本の毛鉤と共にありました。
他の道具はその後紛失し、残りの道具、つまり毛鉤と他の道具が詰まったトランクは、翌年、鉄道急行会社によって紛失しました。(この日付は私の知る限りです)
彼は長年の蓄積を失ったことに非常に落胆し、上記の1回を除いて二度とマス釣りをしませんでした。
ハーディ・フェアリーは、いつも彼のお気に入りの 1 つで、ハーディ・コロナ・ラインとセント・ジョージ・リール、テーパード ガット キャスト、通常は2つか3つのフライを使ってウェットフィッシングをしていました。
彼のお気に入りの3つのフライ キャストは、ドロッパーにウッドコック イエローとグリーン、真ん中にシュリンプ フライ、テール フライにワームフライまたはコチボンドゥでした。
このロッドに入札して成功した人が、このロッドを寄贈するか、最終的には彼の遺産からアメリカ フライフィッシング博物館に寄贈することを真剣に検討してくれることを願っています。
敬具、ジョン・H・N・ヘミングウェイ
息子さんの希望通り、この竿は博物館に無事寄贈されたわけですね!