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「百年」という言葉。
僕の気持ちのうえでは、「百年前」という言葉は、「明治のあの時代」、というイメージを持っています。
江戸から明治の御一新。
「明治百年」、というキャッチコピーが昔ありました。
今年は2024年、令和6年。
もうここからして僕は瞬時に言えないし。
今年は何年?とか急に聞かれると、「それはそれは~」になっちゃう。
「昭和はいつ終わりましたか?」ていうのも困るなあ。
瞬時に答えられない。
1989(平成元)年1月8日、64年間続いた昭和が終わり、元号が平成に改められました。
僕が40歳の時だ。
僕が生まれたのは昭和34年、1959年(これはさすがにまだ瞬時に言える)、これなんともう65年前なのです!
この前、僕は誕生日だったから間違いない。
2024年の3月から見て100年前は、1924年、大正13年!
もう、大正から昭和へ、だ。
その前の年の関東大震災、そこからの復興・再出発、そして世界的孤立と戦争への傾斜。
これが僕たちの「百年前」。
この年(1924年)はといえば。
大正時代は「大衆文化」が花開いたときであった。デモクラシーの風潮は大衆に「文化」への意識を目覚めさせ、「文化主義」「文化住宅」など、「文化」が時代のキャッチフレーズになった。
映画館、劇場、美術館、遊技場、野球場など、観客の大量動員を可能にする大型の文化施設が大都市を中心に次々と造られ、この年に竣工した阪神電車甲子園大運動場(現・阪神甲子園球場)は東洋最大と称された。
また、政府は震災後の住宅不足対策として、財団法人同潤会を設立。大正から昭和初期にかけて東京で鉄筋コンクリート造アパートを建設し、公団住宅の先駆けとなった。
こんな動きも。
1月 第1回冬季五輪、フランスで開催
5月 ココ・シャネルが香水の「シャネルNo.5」を発売
11月 寿屋(現・サントリー)が京都・山崎に日本初のウィスキー工場
東京に市営バスが登場
ウォルト・ディズニーが初のアニメーション「不思議の国のアリス」を製作
☆
その10年後。
吉野源三郎は、山本有三の好意で新潮社「日本少国民文庫」の編集に参画(1935年)。
これは、軍国主義の時勢に抗してヒューマニズムを子どもたちに伝えることを意図された全16巻の叢書で、吉野は編集主任となる。
『君たちはどう生きるか』もその1冊として1937年刊行。
この年、盧溝橋事件が勃発した。
☆
吉野 源三郎(よしの げんざぶろう、1899年(明治32年)4月9日 - 1981年(昭和56年)5月23日)は、編集者・児童文学者・評論家・翻訳家・反戦運動家・ジャーナリスト。昭和を代表する進歩的知識人。
『君たちはどう生きるか』の著者として、また雑誌『世界』初代編集長としても知られている。岩波少年文庫の創設にも尽力した。
今この時代に、あの漫画や映画が注目されているのも、考えさせられますね。
ところで。
『日本少国民文庫』って気になりますよね。初めて目にするものだし。
近代日本が、社会・経済・文化的にピークに達して、国際的には行き詰まる。
そんな中で、当時の若者の世代が、次なる時代を担うであろう子供たち(少国民ね)に何を言い残し何を托そうとしたのか。
それがこの16冊の叢書だったんだろうなあ。
繋げようとする思い。
もう戦争の惨禍がすぐそこまで迫っていましたから。
刊行の背景はこんな感じ。
昭和10(1935)年、山本有三は、吉野源三郎、石井桃子、吉田甲子太郎ら若き編集者たちとともに、全十六巻からなる子ども向け教養叢書『日本少国民文庫』の刊行を開始しました。
編集長を務めた吉野の回想によれば、この叢書は、当時、有三が長男に読ませるための良質な書物がないことに暗澹たる想いを抱き、企画されたものであると言います。
言論・出版の自由が制限されつつあった時代の中で編集・刊行された書物でありながら、恩地孝四郎が手掛けた色鮮やかな装幀や、「人類の進歩」という共通のテーマによってまとめられた巻構成、各分野の第一人者からなる執筆陣等、極めて先駆的かつ良質な児童書に仕上がっています。
要するにこれは、未来に思いを託す山本有三さんの壮大なミッションだったんだなあ。
『日本少国民文庫』を検索しましたが、なかなか整理された情報がないので、自分で調べてみます。
古本屋さんとかネットオークションの情報を集めてつなげるとだいたい分かってきました。
「全十六巻」の内容を確定しなくちゃですが、ちょっと、問題が発生。
これ、大きく分けて、初版のシリーズと改訂版とがある。
著者と内容まで異なる本があるから、おそらく当局の手が入ったのですね。
なんたって大東亜戦争の最中だから。
「非国民」が「小国民」を扇動している、と思ったのかな。
でも山本さん(ていうか吉野さん)、なかなか上手くすりぬけていますね。
構成というか、表現というか。
さすが頭の良いスタッフたちです。
この問題は興味深いのでこれから少し突っ込んだ考察をしたいと思います。
なので、現段階ではメモ程度に書名のリストを挙げておきます。
(改訂版については別稿で考えます)
➀人間はどれだけの事をして来たか(一) 恒藤恭
新潮社 1936(昭和11)年9月25日 日本少国民文庫 第1巻
➁人間はどれだけの事をして来たか(二) 石原純
新潮社 1937( 昭和12)年3月8日 日本少国民文庫 第2巻
③日本人はどれだけの事をしてきたか 西村眞次
新潮社 1936(昭和11)年10月 1943.11 改訂 日本少国民文庫 第3巻
④これからの日本これからの世界 下村宏
新潮社 1936(昭和11)年6月29日 1943.6 改訂 日本少国民文庫 第4卷
新潮社 1937(昭和12年)8月10日 昭和13年4版増刷 日本少国民文庫第5巻
⑥人生案内 水上瀧太郎 編
新潮社版 1937(昭和12)年2月17日 日本少国民文庫 第6巻
⑦日本の偉人 菊地寛
新潮社 1936(昭和11)年3月28日 日本少国民文庫 第7巻
⑧人類の進歩につくした人々 山本有三 編
新潮社 1937(昭和12)年1月11日(13年4版増刷) 日本少国民文庫第8巻
⑨発明物語と科学手工 廣瀬基
新潮社 1935(昭和10)年12月 日本少国民文庫 第9巻
⑩世界の謎 石原純 編
新潮社 1936(昭和11)年5月10日 1942.7 改訂版 日本少国民文庫 第10巻
新潮社 1936(昭和11)年8月10日 1949.9 改訂 日本少国民文庫 第11巻
⑫心に太陽を持て 山本有三
新潮社 1935(昭和10)年11月5日 1948.4 改訂 日本少国民文庫 第12巻
新潮社 1937(昭和12)年4月 1944.12 改訂 日本少国民文庫13巻
⑭⑮世界名作選(一)(二) 山本有三 選
新潮社 1936(昭和11)年1・2月1942.8 改訂 日本少国民文庫 第14・15巻
⑯日本名作選 山本有三 選
新潮社 1936(昭和11)年7月15日 日本少国民文庫 第16巻
☆
山本有三といえば、この言葉を思い出します。
「たったひとりしかない自分を たった一度しかない一生を ほんとうに生かさなかったら 人間うまれてきたかいが ないじゃないか」という『路傍の石』の一節。
ほんと、それ。