血圧値 128/83/71 酸素飽和度 98% 体温 36.5℃ 体重 69.7キロ
ここのところ、つらつらと考えている、「人が人を殺す」問題ですが。
0600 起床 気分快 雨 「人が人を殺した」という事件の報道が毎日毎日、何件も何件も。そもそも「人間には人間を殺す権利がある」のかという問題について。 - にこたろう読書室の日乗
0600 起床 気分快 晴 自衛隊員の発砲殺人事件について考える。「そもそも人は人を殺すことができるのか」という命題の再考。 - にこたろう読書室の日乗
たとえば、現在進行形の「プーチン戦争」しかり、大きな戦争で兵役に取られて、大変なことになるケースがありますね。職務として人(敵)を殺したり、殺されたり。
僕の母方の叔父さんなんか、陸軍の通信兵か何かで満州を転戦し、終戦まで生き延びたのに、そのあとソ連軍の捕虜となり、解放されることなくシベリアで抑留され、昭和22年まで現地で過酷な労働を強いられ、ついに沿海州の僻地の野戦病院(と言っても病院なんてたいそうなものではない、捕虜収容所みたいなところ)で亡くなったらしい。
「らしい」というのは、遺骨も何も帰ってこなかったし、さしたる情報すらないからです。靖国神社がお墓ということになっています。
「抑留」については、以前ちょっと、書きました。
0430 起床 気分快 雨 「推理小説」を定義します。「読ませる機械」です。『東京ダモイ』を読みました。「抑留」について勉強になります。 - にこたろう読書室の日乗
いま、僕の気持ちの終活の一環として、この叔父さんについては、できるだけの情報を集めて、せめてもの供養としたいと考えてます。
軍歴証明書等を作成中で、都庁の福祉保険局と遣り取りをしています。(海軍は厚労省管轄ですが、陸軍は都庁なのです。)
結果の詳細は、いずれここに書くことになるでしょう。
戦争では、「職務」として人(敵)を殺したり、殺されたりするわけですが、心情ととしてこれは、とても辛い。
やるほうも、やられるほうも、はたまた、やらせるほうも。
誰も好き好んで、戦争なんかしたくはないでしょう。
「これも、時代だ」なんて理屈にならない理屈で、人を殺す日常。これは心身ともに大変なプレッシャーですね。これが国家規模で進行する。
今日考えたいのは、「人が人を殺す仕事」の、もう一つのパターン。
そういう仕事は、軍事部門以外で、そうやたらとあるわけではないのですが、じつはもう一つ、あるのです。
やはり国家公務員職ですが。(さすがに民間にはないでしょう、日本の場合。)
これはちょっと語るに憚られる、というか人間にとって凄く厳しいテーマなのですが。
ここで、推理小説を1冊挙げましょう。
『13階段』 (文春文庫) / 高野和明/著
なんとなくピンとくることと思います。13階段。
実際には13の段を登るのではなく、平面の床がバタン!と階下に落ちるのですが。
江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリー登場!
「このままでは無実の男が処刑される! 」――
前科持ちの青年・三上は、刑務官・南郷と記憶の無い死刑囚の冤罪をはらす調査をするが、処刑まで時間はわずか。無実の命を救えるか?
迫りくるデッドラインと、それを阻止しようとする男たちの攻防。一気読み必至。魂が震える、ノンストップ・サスペンスの傑作!
僕のお知り合いにもおられますが、「刑務官」という職業。
刑務官は、国民生活の基盤である治安を支え、罪を犯した者を更生に導くことにより再犯を防止し、もって安心・安全な社会を築くという使命を果たす国家公務員です。 現在、17,500名の刑務官が全国各地の刑事施設(刑務所、少年刑務所又は拘置所)において、勤務に励んでいます。(法務省サイトより)
あえて書いていないようですが、その職能の中に、「死刑の執行」に関する諸々、があるのです。
これが、とても辛い、というか想像するに余りある状況だそうです。精神的なダメージを深く受けてしまう。
3人の係官が壁にある3つのボタンを同時に押すと、そのどれかが反応して死刑囚の足元の床の扉が開き、身体が宙ぶらりんとなって落下し、首にかけられた縄が締まって死に至る。その後処理とかもやらなくてはで大変。
ひとりの刑務官が生涯でこの行為に関わる回数はそう多くはないようですが、さすがにこたえる。辛い。なんで自分がこれをやらなくちゃならないのか、と思いますよね。
仕事とはいえ、人の命を奪うわけですから。できればやりたくない。
ましてや、冤罪なんて問題も可能性としては起こりうる。
この小説を読むと、とてもリアルに、詳しくその周辺の事情が分かります。
ご一読を薦めます。ミステリーとしても秀逸。
僕たちは、普通あまりこの問題を気に留めていないと思います。
新聞のニュースで、たまにこういう記事を見かけます。
ひっそりと、報道されます。
2022年(令和4年)7月26日午前、加藤は法務省(法務大臣:古川禎久)の死刑執行命令により、収監先の東京拘置所にて絞首により死刑を執行された(39歳没)。
当時の古川禎久法相は、「凶悪犯罪が後を絶たない状況にかんがみると、罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者には、死刑を科することもやむを得ない。 死刑を廃止することは適当ではない」と述べています。
加藤は死刑確定翌年の2016年(平成28年)5月10日付で、東京地裁に再審請求を申し立てており、2020年(令和2年)8月28日には第2次再審請求。死刑執行時点では犯行時の責任能力を争い、第2次請求中だった。
『毎日新聞』は、法務省が本事件の結果の重大性や社会的影響、事件発生からの時間の経過などを考慮した結果、執行の数年前から加藤をその対象者として検討していたという旨を報じている。
この「加藤」とは、東京・秋葉原で2008年に7人を殺害し、10人に重軽傷を負わせたなどとして死刑判決が確定していた、加藤智大死刑囚です。
「秋葉原無差別殺傷事件」、大きな事件でしたから、記憶しているかたも多いでしょう。
東京地裁は2011年、「人間性の感じられない残虐な犯行」だとして、死刑を宣告した。2012年9月の二審東京高裁も一審判決を支持し、弁護側の控訴を棄却。さらに最高裁は2015年2月に加藤死刑囚の上告を棄却し、死刑が確定した。
刑事訴訟法では、死刑確定後6カ月以内に執行するように定めています。
しかし、実際には、その期間で執行されることはまずありません。
たとえば、2000年以降、2022年7月26日までに98人の死刑囚に対して刑が執行されていますが、最も短いケースで確定から1年、長いケースでは19年5カ月だったそうです。
法務省は執行対象者を決定する基準などは一切、明らかにしていません。それどころか、かつては死刑執行の事実も公表していませんでした。
1998年10月、当時の中村正三郎法相の指示で執行の事実と人数の公表が始まり、2007年9月から当時の鳩山邦夫法相の指示で、氏名と執行場所も公表するようになりました。
私刑は、その事務的手続きとして、最終的にその時の法務大臣が決裁をしない限り、執行されません。このハンコを押すのが、やはり気が進まないわけです。人として。
できれば、自分の時にはやりたくない。なので、内閣改造の直前みたいなタイミングでハンコを押してもらう、というようなことが実際にあるそうです。まあ、どさくさに紛れるというか。
上のグラフを見ると、特徴的な山が二つありますね。2008年と2018年。
これは何が要因なのか。
2008年には、15人が死刑執行されました。この年の死刑執行数が多かった理由として、当時の法務大臣である鳩山邦夫氏が、死刑執行を加速する方針を打ち出したことが挙げられます。鳩山氏は、2007年12月から2008年5月までの間に、計16人の死刑を執行しました。また、この年には、上記の「秋葉原通り魔事件」が起こっています。関連というか、影響があったのでしょうか。
2018年。これは1月にオウム真理教関連の裁判が終結し、同年7月に元幹部13人に対して相次いで死刑が執行されています。国内外から批判や疑問の声も上がったのですが、因果応報みたいな雰囲気があったことは否めません。
いずれのピークにもかかわった法務大臣がいるわけですが、彼らは当然の職務を執行したわけで、どうこう言われる筋合いはないと言えますが、「死神」とか揶揄されてしまったのはお気の毒でしたね。
こういう資料があります。ご参考までに。
Template:法務大臣の死刑執行命令数 - Wikipedia
「法務大臣というのは、朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」「法相になっても金にも票にも縁がない」と発言し、即刻更迭となった葉梨康弘という法務大臣がいましたが、その背景にはこういう問題もあるのです。
また、元刑務官としてのいろいろな苦渋についての、このようなコメントも、僕たちは読んでおくべきでしょう。
元刑務官「いまだに夢を」歴代大臣の葛藤 被害者は…様々な“死刑の重さ”【報ステ】