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黒川谷戸巡行の続報です。
小田急多摩線黒川駅。
山林と農地が広がる里山。
今回は下見ということで、この赤線の大回りコースは辿らず、黒川駅から4まで谷戸を辿り、6の毘沙門天堂のある山をぐるっと回って黒川駅へ戻る、というコースを歩きました。
奥多摩にもある地名ですね。いかにも谷あいの集落にある場所っぽい。
黒川の谷戸に入る入り口の小高い丘の上に鎮守する、立派な神社があります。
汁守神社(しるもりじんじゃ)
天明2年(1782年)に社殿が再建され、主祭神は保食命(うけもちのみこと)。
正面石段を上がると天保5年(1834年)に建立された鳥居がある。
広い境内は6133平方メートルで、保存樹が生い茂り、川崎市選定「まちの樹50選」のやぶ椿がある。
例大祭は毎年9月第4日曜日で、大勢の人々で賑わう。
現在の本殿、拝殿は明治37年(1904年)から大正3年(1914年)にかけて独立した構造で新築されている。
面白い名前の由来は、武蔵国の守護神、大國魂神社の例大祭に汁物を奉納する役割を担っていたと伝わる神社だから。
境内の切り株に腰かけてお昼のサンドウィッチをいただき、神社を後にします。
神社のある高台はこんな感じ。
周りは畑地になってます。
左側の尾根の下に三沢川が流れています。
フェンスの向こうが三沢川。
とても良いお天気で、暑いくらいです。
人も犬も、いない。
分岐がいくつかあります。
それぞれ小さな谷戸に通じる道です。
右側の小高い山に向かって、細い登り道があります。
上のほうに見える鳥居が、「毘沙門天堂」。
登っていくと、首無し地蔵と、小さな古い祠があるのみです。
細々と、信仰は続いている。
そんな雰囲気が感じられますが、ここは、かつて栄え、今は廃寺となった墨仙山金剛寺の跡地なのです。「墨仙(ぼくせん)」とは、「くろかわ」という意味です。
この小山全体が、大きな伽藍だったのでしょう。
その一角に「毘沙門天堂」もあり、今はその気配のみが、このささやかな祠として、わずかに残っています。
『新編武蔵風土記稿』には次のような記載。
金剛寺 除地、二畝、村の西にあり、新義真言宗、多磨郡坂浜村高勝寺門徒なり、墨仙山と号す、開山を詳にせず、客殿五間に四間南に向ふ、本尊大日如来、木の坐像にて長一尺五寸ばかり、行基菩薩の作なりと云傳ふ、当寺は祈願のわざを専らにして滅罪を事とせず、八幡社 客殿の東の方にあり、観音堂 同く東の方にあり、如意輪観音にて長一尺ばかり、堂は一間半に二間半なり、毘沙門堂 行基の作にて、長七寸ばかりの坐像なり。
明治の廃仏毀釈で消失してしまったようです。
金剛寺の跡地の山をぐるっと北側に回り込みます。
道は登り坂になります。
ピークを越えると、下り坂。
農家、があります。
樹々は紅葉していますが、今年はちょっと彩度が低いのかな。
芝を焼く、という感じかな。
のどかな、里山の風景です。
何十年も前から時が止まったような、不思議な集落のおだやかな日常。
何代にもわたって、この山かげの村では、こういう農耕生活が営まれてきたのでしょう。
それは、これからも、続きます。
農作業中のおじいさんが、丁寧に駅までの道を教えてくれました。
この北側にも谷戸があります。
この谷を、海道谷戸(かいどやと、かいどうやと)と呼びます。
その由来について、多摩市の瓜生へ向かう街道であった瓜生黒川往還が通っていたからとする説がありますが、「街道とは関係ない地名で、集落を意味するカイトの転化と推定される」という意見もあります。
柳田國男は「地名の研究」で海道=垣内としています。
垣内は古くからカキツと唱えていた。それがカイツとなりカイトとなったので、処によってはカイチと聞こえ、または方言でカクチとも発音したかと思う。伊勢・近江・美濃などはカイトまたはカイドであったとみえて、貝戸・海道・皆渡・開土・外戸などの字が当ててある。
この辺りは住宅地のすぐそばにありますが、雑木林に挟まれた細い谷に畑と田んぼが連なり、心の落ち着く風景を見ることが出来ます。
この谷戸を西へ上り詰めると黒川海道特別緑地保全地区になります。
以前は手入れの入っていない自然のままの荒山で、太い篠竹や直径が2cm以上もある藤ヅルが生い茂っていて人の入ることを拒んでいたところでした。
新しい入山口です。
ここはまた別の機会に訪れましょう。
さて、東に向かって、黒川駅に戻りましょう。
道端に、なにやらオブジェが。
これは、「黒川里山アートプロジェクト 緑と道の美術展 in 黒川」というイヴェントの一環で展示されているものですね。
黒川駅に戻り、帰途につきました。
僕の住んでいるところからちょうど1時間の場所に、このような隠れ里が息づいていることに驚かされた一日でした。
新百合ヶ丘には今後、何回か訪れる機会がありますので、また巡行を推し進めたいと思います。
ちょっと足を延ばすと良さげな立ちより温泉もありますので、ここも行ってみよう。
多摩境天然温泉 森乃彩(もりのいろどり) | 多摩境の日帰り温泉
以下、次号。