にこたろう読書室の日乗

死なないうちは生きている。手のひらは太陽に!

0550 起床 気分快 晴 目黒・行人坂巡行【見て・歩いて・よろこぶもの】⑩後編 インドから行人坂へ。大黒天の長い長い旅路とは。

血圧値 114/86/80 酸素飽和度 98% 体温 36.0℃ 体重 67.5キロ

 

今朝はすこし、暖かいかな。日中は15℃くらいになるみたい。

 

さて、「大円寺」ですが、もう一つ、重要な話題があります。

 

このお寺、じつは江戸城の裏鬼門(南西)を守護する寺社の一つなのです。

 

鬼門とは、北東の方位・方角のこと。日本では古来より鬼の出入り方角であるとして忌むべき方角とされて、警戒されています。 

鬼門はもともと古代中国の考え方で、その起源は古代中国の説話や歴史上の情勢・地形の問題など諸説あります。

それが日本に伝来し、安倍晴明で知られる陰陽道神道、怨霊信仰などの影響を受けて、不吉な方位として徐々に広まっていきました。
そのため、都や幕府の鬼門にあたる方向には、鬼門除けとして大きなお寺が建てられることが多く、平安京の鬼門には比叡山延暦寺が置かれています。

 

「裏鬼門」とは、北東に位置する「鬼門」に対し、南西の方角を示す。 

陰陽道では、北東と南西は陰陽の狭間で不安定になるとされ、裏鬼門も鬼門とセットで不吉な方角と言われています。

 

ではどうしたら、良いのか。

お守りもあるようですが。

 

大円寺では、裏鬼門守護のために「大黒天」が祀られ、現在も本堂に祀られています。

霊験あらたかでその当時から“江戸の三大黒天”の一つとして崇拝されていたそうです。

 

「だいこくさま」というとこういうイメージですね。

 

 

元は農民の神で、五穀豊穣、実りのシンボルとして知られる、商売の神様です。

木でできたハンマー(小槌)とお土産を入れた大きな袋が特徴です。

 

この「大黒様」は、宝船などでおなじみの七福神のメンバーです。

幸せを招くといわれる七人の神様をグループ化して、インド、中国、日本に伝わる信仰対象を組み合わせて福の神とした、日本独自の信仰です。

各地に七福神巡りはありますが、山手七福神は1839年の「東都歳時記」でも紹介されており、古い歴史を持っています。

江戸幕府3代将軍徳川家光が鷹狩りの際に使ったルートであったともいわれ、それが庶民の山手七福神人気に拍車をかけることになり、行楽を兼ねた信仰として広まりました。

 

目黒区教委は、こんなモデルコースを推奨していますが、僕はまだ踏破していないなあ。行ってからこの文を書くべきだったかな。

 

 

本堂に祭られている大黒天の像は、徳川家康をモデルに彫られたといわれています。
また、釈迦堂には、左右に弁財天と毘沙門天の顔を持つ三面大黒天も祭られています。

大きな提灯もさがってるし。

 

 

ところで、なんでこのおめでたそうで柔和な神様が「魔除け」になるのか。

 

じつはここに大きな誤解、というかやらかしがあるのです。

 

もともと「大黒天」とは。

 

インドではサンスクリット語で「マハーカーラ」と呼ばれます。

  「マハー」=「大」
  「カーラ」=「黒」

 

日本語に訳すと「大いなる暗黒の神」となります。

だから「大黒」。

 

黒は時間の闇みたいなニュアンスで、いわばブラックホールのようなものかな。

宇宙が滅びた後の虚無、みたいな感じ。


破壊と再生を司るシヴァ神が、世界を破壊するときにこの姿になるといわれています。

が、この辺の解釈は、この神様がインドから中国、日本に伝わる過程で、かなり混迷してきます。

 

大正新脩大蔵経 図像』第三巻
「図像No.142 大黒天」

 

その体は、青黒色か黒色をし、三面六臂という顔が3つに、腕が6本。
右手の第一手で剣を持ち、左手の第一手は切先に添える形をとっています。右手第二手で人間を、左手第二手でを掴み、左右の第三手での皮を掲げるというスタイルです。

 

上の文章の中に、決定的な間違いがある。

 

この半裸の女性は人間ではなくヒンドゥー教の主神のシヴァ神

羊ではなくシヴァの乗り物の白牛。

象はガネーシャ神。

 

この絵のほうが、分かりやすいかな。

インドでヒンドゥー教バラモン教)と仏教が敵対した時、多くのヒンドゥー教の神様が仏教の軍門に降って取り込まれました。

多くは下っ端の神様(天部とか明王部)として採用されたのですが、最強の破壊神シヴァだけは強敵だったので、わざわざマハーカーラーという「シヴァを殺すもの」的な最終兵器を創り出したわけですね。これでシヴァを制圧できる。

 

なので、マハーカーラーは最強の「戦闘神」「軍神」となったのですが、その過程が中国に入る途中でなぜか忘れられてしまって、「大黒天」という良く分からないマイナーな「天部」の一人として、遥か日本にまでやってくることになったのです。

 

そのあと、びっくりするようなことが起こります。

 

日本の神話の系統に、出雲神話という、近畿天皇家の神様とは違う、異なった派閥の文化があります。滅ぼされた神々と言っても良いかもしれませんが、その主神を大国主神(おおくにぬしのかみ)と言います。天孫降臨に際し、国を譲って隠退。「日本書紀」では、農業・畜産を興して医療・禁厭(まじない)の法を定めたとされます。

古事記 5 ~大国主命~ 因幡の白ウサギ、赤い猪、大国主の試練 - YouTube

豊かな実りと、兎のけがを治してあげたように癒しをもたらす神として民間に浸透しますが、この「大国=おおくに」と「大黒=だいこく」がたまたま音読みで同じだったので、二人の神様が合体してしまったのです。

 

ほんとかね?

 

マハーカーラーが担いでいる白い象の皮と大国主命が担いでいる白い袋は、なんとなく似ていますけどね。

 

そういうわけで、大円寺には、半跏像という珍しい形態で憤怒形の武闘神というスタイルの大黒天と、大国主と習合して、しかも大黒天と毘沙門天と弁財天が合体された最強の三面大黒天、という2体の「だいこくさま」が祀られているのです。

 

 

 

なんか、頭がくらくらするお話ですね。