にこたろう読書室の日乗

死なないうちは生きている。手のひらは太陽に!

0540 起床 気分快 曇 青面金剛を深読みする② 奇病を流行させる鬼神から、改心して今度は逆に病気を撲滅する側に。日本での作例をいくつか。

血圧値 133/86/65 酸素飽和度 98% 体温 36.4℃ 体重 67.3キロ

 

今朝は雨模様ですね。ここ数日、良いお湿り。

 

さて、前回ご紹介した『江戸仏像図典』。

近年脚光を浴びる桃山・江戸期の仏像を写真・図版約500を収め紹介したもの。

久野健先生が、東京を中心に全国各地にわたって収録した特徴的な仏像・神像・肖像を彫刻もふくめ71の尊像名別に収め、製作年代順に配列してあります。

 

先生は、日本の仏像研究家。日本彫刻史が専門で、仏像研究に日本で初めて光学的方法を適用しました。

 

日本で仏教美術というと、古代からせいぜい室町時代くらいまでが評価の対象で、近世以降はあまり重要視されてきませんでしたから、とても興味深い本です。

 

『陀羅尼集経』よると、こんな感じに整理できます。

 

青面金剛は青色大金剛夜叉。夜叉という場合は、インドでは悪鬼のことです。

五方に五帝夜叉が居て、青面金剛は東方青帝夜叉です。

奇病を流行させる鬼神で、9万人の眷属(手下のこと)を従えて寒山に住み人々の精気と血肉を食う悪いやつでしたが、改心して今度は逆に病気を撲滅する側に回ります。人々は病を避けるために、この悪鬼の像をつくって祀るようになりました。

 

仏教界で○〇天とか○〇明王とか呼ばれる仏様は、たいていバラモンヒンドゥー)教系のインドでも古い神様で、仏教に敵対していたものが、仏教の傘下に入り(帰依したといいます)、下っ端の神格として組織化されたものが多いです。

 

そういう意味で、青面金剛も解釈することができそうです。

 

こいつが。

 

こうなった!

みたいな。

 

のちに、中国の道教と結びつき、日本で独自の発展をしていきます。
江戸時代には庚申信仰の本尊となります。

 

日本では圧倒的な進化をしますが、中国やインドにはほとんど信仰事例が存在しないという、異色の存在です。

 

青面金剛像の特徴としては、「青面」という名の通り、青い顔・体をしています。

忿怒相といい、怒りの表情で、額には三つめの眼があります。

おそろしい姿をしており、頭上にドクロを載せたり、首や腕にヘビを巻き付けるおどろおどろしい姿。持ち物は宝剣や羂索など。まあ、明王系ですね。

手に半裸の女性をぶら下げている場合もある(ショケラといいます。)

 

僕はまだ直接確認していませんが、我が国の青面金剛像の実例はこんな感じ。


①奈良 東大寺の像 平安時代後期の作。腕が6本、上半身裸、首や腕にヘビを巻き付けて立っている。憤怒相ではなく、穏やかな風貌。

 

 

長年、東京国立博物館に寄託されていたようですが、現在は東大寺ミュージアムに移ったらしい。

 

東大寺ミュージアム | 今を大事に! - 楽天ブログ

 

②奈良 ならまち 庚申堂

 

民間信仰色が強い「庚申さん」として青面金剛像がまつられている。

庚申さんのお使いがサルなので、サルをかたどったお守り(身代わり申、願い申)が軒先に連なっています。

 

庚申堂 | 奈良市観光協会サイト

 

③京都 八坂庚申堂(大国山 金剛時 庚申堂)

 

飛鳥時代に中国から渡来した秦氏の守り本尊だった青面金剛像がまつられている。

「くくり猿」が有名。手足を縛られたサルがモチーフで、「欲をコントロールして願いを叶える」お守り。

 

 

http://www.yasakakousinndou.sakura.ne.jp/

 

④青森 最勝院

 

二体の青面金剛のほか、庚申待ちの塔や塚が残っている。

 

金剛山 最勝院

 

以下、次項。