にこたろう読書室の日乗

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0630 起床 気分快 晴 【夢十夜を読み直す話】⑥ 「第一夜」の謎。女は「男が百年待ってくれるかどうか」を知りたかったから死んだのか。

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主人公がこんな夢をみた。


女が、もう死ぬと言う。血色が良く死にそうには見えない。
死んだら埋めてくれと言う。百年たったら会いにくると言う。
まもなく、本当に死んでしまったので、土に穴を掘って埋めた。
それから百年待とうと思って、太陽の出て沈むのを数えた。
百年がなかなか経たないので、女に騙されたかなと思った。

 

百合が咲いた。

 

夢十夜』第一夜は、こういう不思議な話です。

連作中の一番の傑作という人もいます。

 

百年待っていて下さい」夏目漱石【夢十夜】より

 

最後のシーン、女は戻ってきたのでしょうか?

 

百合の花というのは女なのでしょうか。

死んだ者は帰ってはこない。

百合の花は男に何かを伝えるために咲いたのでしょうか。

伝えたかったことは「もう百年経ったよ。もう待たなくてもいいよ。」ということなのでしょうか。

 

女は「男が百年待ってくれるかどうか」を知りたかったから死んだのか。

これが女が死んだ理由でしょうか。

答えは書いてありません。

 

 

この「第一夜」は漱石の実体験の夢ではないように思えます。

とても美しく、幻想的で、奇妙な魅力のあるお話ですが。

ちょっと理知的に構成されている感じがする。

 

「百合」という言葉は「百ののち合う」と書きます。

「百年待つ」または「百年待たせる」というテーマは、多くの文化や神話・民話で繰り返される象徴的なモチーフ(共同幻想的な)です。

このモチーフは、時間を超えた愛、犠牲、忍耐、あるいは奇跡を表現する物語の一部として登場します。

 

例えば日本には、「百夜通い(ももよがよい)伝説」というお話があります。

世阿弥などの能作者たちが創作した小野小町の伝説です。

 

悲恋の伝説!歌人・小野小町と深草少将の「百夜通い」が切なすぎた

 

小野小町に熱心に求愛する深草少将。

小町は彼の愛を鬱陶しく思っていたため、自分の事をあきらめさせようと「私のもとへ百夜通ったなら、あなたの意のままになろう」と彼に告げる。

それを真に受けた少将はそれから小町の邸宅へ毎晩通うが、思いを遂げられないまま最後の雪の夜に息絶えた、というちょっと悲しい物語です。

 

 

これは前にちょっと触れた、映画『ニューシネマパラダイス』に出てくる「アルフレードのおとぎ話」によく似ていますね。

(このエピソードは劇場公開版ではカットされていると思います)

 

映画「ニュー・シネマ・パラダイス」午前十時の映画祭10 | ほくとの気ままなブログ

 

0630 起床 気分快 晴 ある物語。なぜ「彼」は去っていったのでしょうか? シチリアの小さな村を舞台にした映画について。 - にこたろう読書室の日乗

 

「おとぎ話をひとつ...座ろうか」と言ってアルフレードはトトに語り聞かせます。

 

昔むかし 王様がパーティーを開いた
国中の美しい貴婦人が集まった
護衛の兵士が王女が通るのを見た
王女が一番美しかった
兵士は恋に落ちた
だが王女と兵士ではどうしようもない
ある日ついに兵士は王女に話しかけた
王女なしでは生きていけぬと言った
王女は彼の深い思いに驚いた
そして言った
100日の間昼も夜も
私のバルコニーの下で待ってくれたら
あなたのものになりますと
兵士はすぐにバルコニーの下に行った
2日...10日 20日たった
毎晩王女は窓から見たが兵士は動かない
雨の日も風の日も雪が降っても
鳥が糞をし蜂がさしても
兵士は動かなかった
そしてー
90日が過ぎた
兵士は干からびて真っ白になった
眼から涙が滴り落ちた
涙をおさえる力もなかった
眠る気力すらなかった
王女はずっと見守っていた
99日目の夜
兵士は立ち上がった
椅子を持って行ってしまった

 

このおとぎ話を聞いたトトは「最後の日に?」とアルフレードに尋ねます。

アルフレードは「そうだ 最後の日にだ なぜかは分からない 分かったら教えてくれ」と言ってシーンが終わります。

 

作中で答えが明かされていないため、このお話の謎の解釈には正解がありません。

しかし、アルフレードはトトに、「〇〇」とは何かを考えさせるきっかけを与える為にこの話をしたのではないでしょうか?

 

「〇〇」にはどんな言葉が入るのかな?

 

「愛」・「夢」・「目標」・・・