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前回、フラグを立てましたので、行きがかり上、この映画にも触れなくては。
ちょっと前に、観たんですけどね。
『オリエント急行殺人事件 』(2017年)
原題:Murder on the Orient Express
ミステリの女王といえば、アガサ・クリスティー。
言わずと知れた名探偵ポワロ・シリーズの実写化から。
もう超弩級(この言い方の語源は面白いんだけど今はスルー)のネタバレ名作だから、だいどんでんも何もないかな。
いまどき、クリスティを観て、だいどんでんとかネタバレなんていう感覚はないでしょうが。(たまに原作と違う犯人、なんていう小技を使う人もいるけど)
古典も古典、平家物語級の既視感。
(上記3行はコピペです!)
子どものころ原作を創元推理文庫とかで読んだときは、だいどんでんにちょっとだけ驚いたかな?
いやさすがにこれは途中で分かるでしょう。
だから謎解きが目的のプロットではない。
知ってる手品の、手さばきの鮮やかさが見たい、的な愉しみ方ですね。
動機の壮大さとか正義と審判の問題とか、なかなか奥の深いシナリオではありますが、歌舞伎の物語っぽい、レトロさが満載なお話。
深夜、大雪で立ち往生した列車内で一人の乗客が殺され、他の乗客全員と車掌に対し、名探偵エルキュール・ポアロが「灰色の小さな脳細胞」をフル稼働させ、真実を引き出していく。
ほぼ全キャラに見せ場があるので、これほどオールスターキャストがふさわしい作品も珍しい。
この原作は、いろいろな形で、これまで何回か実写化されています。
僕が最初に見たのは、1974年の中学生の時、渋谷パンテオンだったかな。
この景色、懐かしいなあ。
『風と共に去りぬ』も『南太平洋』も、この映画館で観ました。
『オリエント急行殺人事件』(1974年)
ポワロの事件解決後、乗客たちはワインで乾杯を行う。
監督インタビューによれば、本作はオールスターキャストであるので、カーテンコールの意味合いで設けたシーンであるという。
なんたって、フィニー以外は(失礼かな!)、超絶大名優が勢ぞろい。
こんな感じ。
アンソニー・パーキンス、ジョン・ギールグッド、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ウェンディ・ヒラー、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・カッセル、リチャード・ウィドマーク等々。
謎解きの大団円で、勢ぞろい。(リチャード・ウィドマークは冒頭で殺されたから居ません)
監督のルメットといえば、言わずと知れた『十二人の怒れる男』(1957年)が出世作だから、因縁を感じますね。
そして、「本物」はこちら。
『名探偵ポアロ オリエント急行の殺人』(2010年)BBCテレビドラマ版
シリアスな展開のため、最後に全員集めて「犯人はおまえだ!」っていうシーンがないので、雪上で、ポアロが意味ありげな一瞥を残して立ち去るところをキャプチャしておきます。じつに沈鬱なエンディング。
スーシェのポワロについては、いまさら多くを語る必要はありません。
全人生=全ポワロ。
1989年に始まり2013年まで、13シーズンにわたって全70話で終了したシリーズ。
僕は全部、2周くらい観ましたよ。
最後の決断に、ポワロの迷いはない、というのがこの演出解釈のポイントかな。
悪に対しての、非常に厳しい姿勢。「まあ、いいんじゃね」とはならない。
法と正義の間に立たされるポアロのスーシェが、これまでの年月を込めるがごとく渾身の演技を見せます。
スーシェの真面目な人生が重なって見えてきます。
事実上の、白鳥の歌、ですね。
結末がわかっていてもなお(あるいはわかっているからこそ)、何度観ても新たな発見があるミステリーの傑作である本作。
これを逆手にとったのがこれ。
三谷幸喜脚本版スペシャルドラマ『オリエント急行殺人事件』(2015年)
エルキュール・ポアロ(ていうか名探偵・勝呂武尊・すぐろたける):野村萬斎
なぜに2部作連夜放送なのか。
A面/B面があるのはなぜか。
ラストは勝呂が説得される形を取るが、「これは勝呂武尊が解決できなかった初めての事件。しかし、これほど誇らしいことはない」と締めくくる晴れやかさ。
これは観てのお楽しみ。
まだの人は観てください。
そうそう、『黒井戸殺し』・『死との約束』もね。
さて、今回のタイトルの『オリエント急行殺人事件 』(2017年)ですが。
素晴らしい映像美、颯爽とした冒険活劇、とくに列車の描き方が良いねえ。
『ナイル殺人事件』では豪華クルーズ船、こちらでは豪華列車の客車が密室を構成します。
ということは、ロケなしでも舞台セット1個でできてしまう舞台劇仕様の原作を、ケネス・ブラナーはあえて選んでいる感じがします。
彼はシェークスピア俳優でもあるからね。
その辺が面白い。(第3作はちょっと違うのかな)
アクション映画でもあるのです。
現代の映画らしいエンタメ的な爽快感。そしてキャストで突出した存在感を放つのは、ジョニー・デップ。
ちなみに、被害者(悪人?)3人衆はこんな感じ。
冒頭に一瞬しか出ないんだけど、準主役級。
全員登場。
すべてが終わった後も人生は続く。
時を経ても色あせないこのテーマゆえに、この物語は何度もリメイクされてきたのでしょう。
線路は続くよ、どこまでも。
おしまい。